さて、2017年10月25日~開催されている東京モーターショーで話題となっているのは、FCV、EV、PHVなど、2020年以降のグローバルな環境基準に適合するために、これまでのガソリンエンジンやディーゼルエンジンといったパワートレインからのシフト…。
出展されているクルマは、こうした“新時代”を見据えた、環境への対応として様々な工夫、試みが為されているというのが特徴です。
今回、注目されているのは、2020年の東京オリンピック時にデビューが話題されている、トヨタが開発したFCバス(燃料電池バス)の「SORA」のコンセプトモデル。
今回は東京モーターショーに出展された「SORA」が一体どのような“バス”なのかについてこのコラムで進めてゆきたいと思います。
目次
「SORA」の開発コンセプトは「受け継がれてゆく街のアイコン」
さて、SORAというネーミングに関して、開発担当者の方は以下のように示しています。
街中を駆け巡る、人の輸送、運搬を目的とする乗り物が、空~海~川~空気を還流させ、環境に優しいモータービーグルとしての使命を果たすというその決意が表されたネーミングであると筆者は解釈しています。
更に、FCバスの特性を生かした大容量外部給電システムを搭載して最高出力9kW、供給電力量235kWhの電源供給能力を備え、災害時に電源として利用できるようにしたという点に着目。
また、利便性や安全性への配慮もなされていて、居住性を向上させるため、ベビーカーや車いすのスペースに自動格納機構付き横向きシートを新設。ベビーカーや車いす利用者がいない場合は一般利用者が座れるようにしたほか、車内外に配置した8個の高精細カメラがバス周囲の歩行者や自転車などの動体を検知して、ドライバーへ音と画像で知らせる周辺監視機能を搭載し、安全性を向上させています。
こうした様々な配慮、工夫が為されることで、これまでのバスのイメージを一新し、機能的かつ快適な乗り物としての今の先端技術の粋が集められている点には、トヨタの“社会貢献を果たす乗り物”の開発への意気込みを感じます。
新型 燃料電池バス「SORA」のスペックは?
公表となった主要諸元は以下の通りです↓↓
ボディサイズ(全長×全幅×全高):10,525mm×2,490mm×3,340mm
定員(座席+立席+乗務員):79(22+56+1)人
トヨタFCスタック(固体高分子形) 最高出力 114kW×2(155PS×2)
種類:交流同期電動機
最高出力:113kW×2(154PS×2)
最大トルク:335Nm×2(34.2kgm×2)
本数(公称使用圧力) 10本(70MPa)
タンク内容積 600L
駆動用バッテリー ニッケル水素
最高出力/供給電力量 9kW/235kW
SORAの特徴である、FCスタックを用いた駆動方式を乗用車で説明すると図のようになります。
STEP1:空気(酸素)と水素をFCスタックに送り込む
STEP2:酸素と水素の科学反応により、電気、そして、水が生まれる
STEP3:駆動用モーターに送電し、クリーン&パワフルな走行を実現
モーター走行による変速ショックをなくし、急加速を抑制して緩やかな発進を可能とする加速制御機能を採用されていることで、これまで気になっていたギアチェンジ、シフトアップ際の衝撃が大きく緩和されることは特筆に値し、走行中のお子様やお年寄のケガが抑制されると思われます。
公開となった内装デザインから推測されるのは、やはり、ユニバーサルデザインを意識した段差や勾配を極力抑制した創りとなっている点。
走行中のショックが低減され、なめらかな加速が実現すれば、まるで公道を走る“電車”のような、乗り心地を味わうことが可能になるかも知れません…。
「SORA」が目指すシティビーグルとしてのバスの未来は?
筆者の感覚としては“バス”という乗り物は、電車や乗用車と比較して、さほど目覚ましい進化を遂げてきたようには思えませんでした。
勿論、観光バスや高速バスなどは、装備や機能面で充実は図られてきましたが、所謂、路線バスはシティビーグルとして単純に“人を運ぶ”という目的のもとに開発が為され、そこに然程の進化はありません。
つまり、2020年以降、グローバルな環境適合を目指すのみならず、乗っている人が更に楽しめ、更に快適さを実感できる“乗り合い自動車”の実現こそが各メーカーに課せられた課題ではないか?
と筆者は考えます。
トヨタ 新型 燃料電池バス「SORA(ソラ)」のまとめ
新型SORAの市販モデルは、2018年の発売を予定しており、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、東京都を中心に100台以上の導入が計画されています。
納入金額等は明らかにはされていません。
こうしたFCバスがどのように日本全体に浸透、普及してゆくか?筆者は注目してゆきたいと、そう思います…。