2016年10月23日、トヨタ自動車は2020年開催の東京オリンピックに向け、自社のタクシー専用ブランド「JAPAN TAXI」から、標準装備の「和」と上級グレードの「匠」の発売を発表しました。
このリリース情報をもとに、今日は新世代のタクシーについて考えてゆきたいと思います。
目次
これまでのタクシー仕様車の課題とは?
これまでの日本のタクシー仕様車の中で最も販売台数を誇るのが、トヨタのクラウンコンフォート…。
因みにコンフォートのスペックですが、
全長:4,695mm
全幅:1,695mm
全高:1,515mm
まず、これから多くの外国人観光客の方々が乗車することを前提にした際の課題は、
・日本人よりはるかに体格のいい外国人の方々に快適さを味わっていただくための乗車スペースの確保
・膨大な手荷物を抱えて移動することを考慮した際の荷物搭載スペースの確保
というこの2点が挙げられます。
つまり、これまでのような、普通乗用車のタクシー転用では、もはや先に挙げた二つの課題の解決は望めないということで、トヨタはJAPAN TAXIブランドを設立。新たなタクシー専用車両の開発に着手したというわけです。
ちなみにライバル日産はいち早く、この波に対応すべく、まったく新たなタクシー仕様車を開発、それが、「和」、「匠」のライバルとなる、NV200なのです。
課題解決に挑んだ「和」「匠」のスペックとは?
まずは「和」と「匠」に関するニュースリリースから。
TOYOTA、新型車JPN TAXIを発売
-日本の「おもてなしの心」を反映した、様々な人に優しい次世代タクシーを投入-
低床フラットフロア、大開口リヤスライドドアなど、様々な人に優しいユニバーサルデザイン*1
一目でタクシーと認識でき、街に調和するデザインと「深藍(こいあい)」のボディカラー
「Toyota Safety Sense C」、6つのSRSエアバッグ*2の標準装備など安全装備を充実
TOYOTAは、新型車JPN TAXI(ジャパンタクシー)を開発し、全国のトヨタ店、トヨペット店を通じて10月23日に発売した。
JPN TAXIは、日本の“おもてなしの心”を反映し、お子様、高齢者、車いす使用者、外国からの観光客など、様々な人に優しく快適なタクシー専用車として開発した。JPN TAXIの普及により、日本の風景を変え、バリアフリーな街づくり、観光立国への貢献を目指す。
具体的には、お客様が乗降しやすい低床フラットフロアや大開口のリヤ電動スライドドア(左側のみ)、車いす*3での乗車も可能な構造など、グリップから構造全体に至るまで工夫と改良を重ね、様々な人に優しいユニバーサルデザインとした。
また、ロングライフで流行に左右されないスタイリングや、古くより日本を象徴する色として愛用されてきた藍色「深藍」のボディカラーをはじめ、一目でタクシーと認識でき、かつ街並みを美しく統一することを目指した。
さらに、ドライバーの観点では、ピラーの位置・形状の工夫やフェンダーミラー等により良好な視界を確保した。タクシー専用設計のこだわりとしては、ナビゲーション画面・料金メーターをお客様も見やすいセンター位置に設置できるようにするなど、機器類の配置を用途に合わせて見直し、機能性を向上した。
車両性能については、新開発LPG*4ハイブリッドシステムを採用することで、19.4km/L*5の低燃費とCO2排出量の大幅な低減を達成し、環境性能と動力性能を高次元で両立させた。そして、「Toyota Safety Sense C」や6つのSRSエアバッグの標準装備など、安全装備も充実させた。
トヨタのタクシーは、1936年のトヨダAA型から始まり、1953年に発売したトヨペットスーパーRH型など、長年にわたり多くのお客様の移動を助けるクルマとして愛用されてきた。昔も今も、様々な道で、通常の車両より長い距離を走行するなど、厳しい使用環境で利用いただいており、クルマづくりのあるべき姿を追求するクルマの原点ともいえる。
トヨタはこのJPN TAXIが、第45回東京モーターショー2017、さらには2020年の東京オリンピック、パラリンピックで、世界のお客様をお迎えするのを楽しみにしている。
THSⅡ TOYOTA Hybrid System Ⅱ
* 価格にはリサイクル料金は含まれない
深藍限定車(東京2020オリンピック、パラリンピックのロゴをリヤドアに広告ラッピングした深藍カラー限定車)も両グレードに設定し、同価格で発売
<出典:トヨタ公式サイト>
まず、このクルマの最大の特徴と言えるのは、天井の高さと広々とした乗車空間の確保、そして、今までになかった低床フラットドアなど、今までのタクシー仕様車の概念を覆す新たな居住空間の創造に挑んだことです。
同じLPG仕様だったクラウンコンフォートが、燃費:9.8km/L(10・15モード)だったことと比較すれば、航続距離は単純に約2倍となり、長距離走行の不安も低減。
更にトヨタとしては、LPGハイブリッドの導入により、今、注目されている環境にも配慮した点が売りであり、東京オリンピックで注目される、“日本の首都の環境改善”にも考慮されるものになると思われます。
全長:4,400
全幅:1,695
全高:1,700
ホイールベース:2,750
乗車定員:5(車いす乗車時3名)
[単位]全長・全幅・全高・ホイールベース:mm 車両重量:kg 乗車定員:人
種類:リダクション機構付のTHSⅡ (1NZ-FXP 1.5L)
排気量:1.5L
最高出力:54[74]/4,800+45[61]
最大トルク:111[11.3]/2,800~4,400+169[17.2]
トランスミッション:電気式無段変速機
駆動方式:FF
使用燃料:LPG燃料
[単位]最高出力:kW[PS]/rpm 最大トルク:N・m[kgf・m]/rpm
和(なごみ):¥3,277,800
匠(たくみ):¥3,499,200
新型「ジャパンタクシー」 その他の特徴とは?
タクシーで必要とされる耐久性と経済性
タクシー仕様車はなにしろ一日の走行距離が一般の乗用車と比較した際に安全確保のためのメンテナンスに相当な配慮が必要とされます。中でも、もっとも破損しやすい箇所がサスペンション。
また、バンパー、ライトレンズ、エンジンのベルトといった頻繁に交換しなければならない箇所に関しても、フロント・リヤともにサイド部分のみ交換可能な3分割バンパー、ランプ類はアウターレンズのみ交換可能な構造、エンジンは、補機ベルトのメンテナンスが不要な電動ウォーターポンプを採用するなど、優れたメンテナンス性で修理コストの低減に貢献するとしています。
注目の安全装備
“衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense C」を全車に標準装備するとともに、アクセルの踏み間違いによる衝突被害軽減に寄与するインテリジェントクリアランスソナー(パーキングサポートブレーキ)をオプション設定するなど予防安全装備を充実した。これらの搭載車は、経済産業省、国土交通省など政府が官民連携で推奨する安全運転サポート車のうち、高齢運転者に特に推奨する「セーフティ・サポートカーS(通称 : サポカーS)」の「ベーシック+(プラス)」に相当する”
<出典:トヨタ公式サイト>
やはり関係者によると、タクシードライバーの方々の高齢化や比較的ドライバー歴の浅い方々が今後、ドライバーとして採用されることを考慮しての配慮が為されていることが伺えます。
また、6つのSRSエアバッグを標準装備され、当然ながら、お客様の衝突時の安全・安心にも考慮されています。
トヨタ 新型「ジャパンタクシー」のまとめ
「和」と「匠」の価格差は、カスタムオプション装備を装着するか否かでわかれていますが、勿論、同一のクルマであり、基本スペックに差はないようです。
日本のタクシー仕様車といえば、今、現在、トヨタ、日産などの限られたメーカーの寡占状態…。市場特性を考慮すれば仕方ないところですが、筆者としてはより多くのメーカーがここに参戦し、タクシーの乗る歓びや選ぶ楽しみも味わいたいところ。
これからの市場動向に期待を寄せ、より多くのメーカー、ブランドのタクシーの進化に期待したいと思います。